まず、お花は有機物で水や土壌などにより自然分解されますので「汚れる」といったことはありません。遺骨についても主成分はリン酸カルシウムですので自然分解されますので、こちらも海が汚れるといったことはありません。実は海が汚れるどころか海にとっては最高の栄養源になっています。
はじめまして。アットマガジンズ有限会社 代表取締役社長の舘山です。 2008年にハワイで散骨を経験したことをきっかけに「まごころ粉骨&散骨代行」千葉本店長として従事しています。これまで累計1万件以上の粉骨、6000件以上の海洋散骨を代行。NHK『クローズアップ現代』をはじめメディア出演・取材実績も多数ございます。 👉 詳しいプロフィールやメディア実績はこちら
花などの「有機物」が海に与える影響は?
花の主成分

散骨の際に海へ手向けるお花は、主に「セルロース」や「ヘミセルロース」「リグニン」といった炭水化物(有機物)で構成されています。これらは、地球上のすべての植物を作っている自然由来の成分です。また、花びらや葉の重量の約80〜90%は水分でできており、プラスチックや化学物質のように環境に悪影響を及ぼす有害物質は一切含んでいません。海に撒かれたお花は、漂流している人工的なゴミとは根本的に異なり、もともと自然界(生態系)の循環の中に存在する「天然素材そのもの」であると言えます。
海での分解プロセスとスピード
海に流されたお花は、まず波や潮の流れといった物理的な力によって細かく破砕されていきます。その後、海水中に無数に存在する海洋微生物や細菌が表面に付着し、酵素を使って分解を開始します。花の種類や水温、流れる海域によって異なりますが、柔らかい花びらであれば数日から数週間、少し固い茎やガクの部分でも数ヶ月程度で自然に分解されていきます。プラスチックゴミのように何百年も海に残り続けることはなく、海の自然な循環プロセスの中でスムーズに姿を変えていきます。
最終形態
微生物によって完全に分解されたお花は、最終的に「水(H2O)」と「二酸化炭素(CO2)」、そして窒素やリンなどの「無機塩類(栄養塩)」へと還元されます。形は無くなりますが、これらは海において決して無駄な廃棄物にはなりません。生成された無機塩類は、海の食物連鎖の出発点である「植物プランクトン」の生長に必要な栄養分となります。つまり、献花されたお花は海を汚すどころか、めぐりめぐって海の小さな命たちを育むための「生命の糧」として自然界へ還っていくのです。
やってはダメなこと
お花が自然に還るとはいえ、何でも海に撒いて良いわけではありません。特に注意したいのが「ラッピング用品」や「リボン」「輪ゴム」「針金」などの人工物です。これらは海で分解されず、海洋プラスチックゴミとなって海洋生物が誤飲するリスクを生みます。また、花粉が強力で生態系に影響を与える恐れのある外来種や、人工着色料で染められたお花も避けましょう。海洋散骨を行う際は、必ず生花のみを1本ずつばらして手向けるか、環境に配慮された自然に還る専用の袋などを使用するのがマナーです。
粉末化した遺骨が海に与える影響は?

遺骨の主成分
ご遺骨の主成分は、主に「リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)」と呼ばれる鉱物(無機物)です。これは人間の骨や歯を構成する主要な成分であり、人工的な化学物質や有害な重金属ではありません。火葬プロセスを経ているため、有機物や細菌などはほとんど消失しており、非常に安定した状態で残ります。このリン酸カルシウムという成分は、実は魚やクジラなどの海洋生物の骨や、サンゴの骨格などと全く同じ構成成分です。そのため、ご遺骨は本質的に海の中に元々存在している自然の物質と何ら変わりありません。
ちなみに焼骨(火葬後のご遺骨)の比重は、主成分であるリン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)の真比重で見ると「約3.14」です。「水(淡水)」の比重が 1.0、「海水」の比重が 約1.025(海水の方が少し塩分があるため重い)ですので、焼骨は水や海水よりも約3倍重い性質を持っていますので散骨すると海底に沈んでゆきます。
海での分解プロセスとスピード
粉末状(2mm以下)にパウダー化されたご遺骨は、海に撒かれると波の力で海水全体に速やかに拡散・希釈されます。化学的には極めて安定した無機物であるため、微生物による分解ではなく、海水への「溶解」と海水流動による「分散」という物理・化学的なプロセスをたどります。海水中の微小な二酸化炭素や弱酸性の環境により、時間をかけてゆっくりとカルシウムイオンとリン酸イオンに電離(溶解)していきます。広大な海の中では一瞬で極めて低い濃度に希釈されるため、海水を濁らせたり水質を悪化させたりすることはありません。
100gの粉末状の焼骨が海水中に完全に溶けきる(化学的に遊離イオンとして融解・電離する)までには、条件によって大きく変わるものの、おおむね数ヶ月から1~2年程度(表層の海流が豊かで拡散が早い場所であれば、実質的に数ヶ月以内)と考えられています。
土に埋めると自然に還るまでに100年以上
同じ条件(粉末状の遺骨100g)を土壌(樹木葬など)に埋めた場合、完全に分解・溶解して土と一体化するまでには、およそ50年〜100年(環境によってはそれ以上)かかると考えられています。これは、火葬時の高熱(約800〜1,000℃)により、骨の主成分であるリン酸カルシウムがセラミック(陶器)のように硬化しており、微生物による分解がほとんど効かず、雨水や土壌の成分による化学的な「溶出」を待つしかないからです。
最終形態
海水に溶け込んだご遺骨は、最終的に「カルシウムイオン」と「リン酸イオン」という元素レベルの形態になります。これらは海水中に豊富に含まれる天然の成分そのものです。特にリン酸イオンは、海の植物プランクトンや海藻類が光合成を行う際に不可欠な「栄養塩」として吸収されます。そして、それを食べた小魚や貝類、サンゴなどの骨格や成長を支える源となります。つまり、粉骨されたご遺骨は海を汚染する廃棄物になるのではなく、海の命の連鎖(生態系)の中に優しく組み込まれ、新しい生命の糧となって生き続けることになります。
やってはダメなこと
遺骨が自然に還るとはいえ、遵守すべき大切なルールがあります。まず絶対に行ってはならないのが、火葬後の遺骨をそのままの形で撒くことです。これは「死体遺棄罪」に抵触する恐れがあるだけでなく、周囲の方に強い恐怖心を与えてしまいます。必ず2mm以下のパウダー状に粉骨する必要があります。また、骨壺やビニール袋、金属類などの副葬品を一緒に海へ投棄することも環境破壊につながるため厳禁です。さらに、沿岸部や海水浴場、漁場、養殖場の近くを避け、節度を守ったマナーある場所で行うことが何より重要です。
まとめ – 汚れるどころか望ましい
海洋散骨や献花は、海を汚すどころか自然の生命循環を助ける有益なプロセスとなり得ます。その理由は、手向けられたお花や粉末化したご遺骨が、海洋生態系の出発点である「プランクトン」の生育に必要な栄養素そのものだからです。
- お花の還元作用(無機塩類)生花は微生物によって分解され、最終的に窒素やリンなどの「栄養塩」へと変化します。
- ご遺骨の還元作用(ミネラル)主成分であるリン酸カルシウムは、時間をかけて水中に溶け込み、カルシウムイオンとリン酸イオンとして海へ還ります。
例えば、水族館の「魚の餌やり」のように一箇所に留まるのではなく、広域に拡散されたこれらの成分は、海中で植物プランクトンを育む貴重な栄養源(肥料)となります。そのプランクトンを小魚が食べ、さらに大きな魚や海の鳥たちへと命が繋がれていきます。
つまり、海洋散骨とは単なる見送りの儀式にとどまりません。人間や植物という「生命のかけら」を海の生態系へとお返しし、新しい命の連鎖を優しく育むという、究極の自然還元(循環)アプローチなのです。
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